日記

1本の鰹節に込められた手数と時間と想いと。

2015年12月13日 大黒谷寿恵, Trip

12342616_1066875223346837_7872060067210774476_n 2

出汁を自分でひくようになって15年くらい経つが、実際に鰹節が作られているところを見たことはなかった。

本やインターネットの情報から製造工程は知っていたものの、やはり自分の目で見て確かめたいという思いが募る。そして先日、本枯れ節の本場、鹿児島県指宿市山川町にある坂井商店を訪ねてきた。

工程としては自分が知っている通りの流れであったが、実際に見なくては分からなかったことがたくさんあった。

まずは、職人さんたちの無駄がなく、ピリピリしているのとは違う集中した作業の素晴らしさ。
鰹を切るという中にも、役割とリレーがあり、10年続けないと出来ない切り分けや、身以外の部位も全て選別され加工に回る。鰹で捨てられるのは血水だけなのだという。

黙々と2時間ほど切り続け、次の工程に移るにあたり、綺麗に掃除される。たくさんの鰹が捌かれているにも関わらず、気になるような臭いはしなかった。

切った鰹が茹でられたあと冷まされ、骨抜き、整形という工程に入るが、そこでも一本一本、流れるような手さばきで骨や余分な血合い、皮の半分が取られる。(皮の残り半分は仕上がった時の良し悪しを見分けるために残されるのだそう)
またざっと掃除がなされた後に、捌いた時に残る骨のすき身のペーストを利用して整形が成される。 独特な木のヘラのようなもので塗りつけるように、一本一本、丁寧に見た目を美しく整える。

形を美しくするということに、職人さんたちのこだわりがある。木を燃やした煙で燻していく作業がこのあと何度も続くが、その都度、反り具合などを一本一本チェックしてまっすぐになるように並べ替えていく。
正直、本枯れ節のすっとした形は、自然とそうなるものなんだろうと思っていたし、その形にこれほど手がかけられているとは思いもよらなかった。燻しが終わった後は、タール分をこれまた絶妙な職人の感覚で機械を使って削り落とし、次に、料理でいうと面取りをするように、使い込まれた刃物を使って職人さんの手で形を整えていく。

カビ付けの後、天日干しをして・・・を繰り返し、半年ほどかかってようやく1本の本枯れ節が完成する。
最後は、人の手だけではなくどうしてもお日様の力が必要だそうで、雨が続けば途端に最後の仕上げも進まなくなるそう。

見聞きするほど、手間隙がかけられているのが分かった。
しかもそれぞれの工程ごとに、私の想像を遥かに超える鰹節の量があったのだが、鰹を買い付けした船ごとに混ざらないよう全て管理されていた。また仕入れた時の鰹の状態により(鮮度、脂の有無)、同じように見える鰹節も状態がかなり違っているということも教わった。
最初に鰹を切りわけながらそれを判断し、そのあとの工程の時間や回数を微妙に変えていくのだそう。

生の鰹から、1本の本枯れ節になるまでは、語り尽くせないほどのストーリーがある。日々、黙々と作業を続けてくださる職人の方々がいなければ、最上級品の本枯れ節を作ることは決して出来ない。

江戸時代から続く、日本食の要である鰹節が脈々と機械化に頼らず、こうやって引き継がれ続けている。
これまで以上に心して、神経を研ぎ澄ませて出汁をひかねばならないと気が引き締まる気持ちでいる。

hisae daikokuya