日記

カツオの現状と出汁のこれから

2015年12月26日 大黒谷寿恵, Trip

カツオ

山川町訪問は鰹節の製造工程を見学する目的だったが、三代目の坂井社長より思いもかけず現在のカツオにまつわる様々な話をうかがうことが出来た。

鰹節にばかりに目が向いていて、材料そのものであるカツオの現状を全く知らなかったことに気づかされた。
今や、カツオは缶詰の食材、tunaとして世界中で広く食べられるようになった。
そこで一大漁場であるインドネシア海域に世界中から大型漁船がカツオを獲りに来るようになったこと。
巨大な網で一網打尽で仕留めるため、稚魚も関係なく獲られ(日本は資源を守る為、網の目が大きくされているそう)、カツオの全体量が減ってきていること。

漁船の技術が発達したことにより、大量にそして簡単にカツオは獲れるようになった一方で、カツオの量が減ってきて近海物がなかなか獲れなくなってきているという問題もある。さらに獲れてもまずは生食用にまわり、鰹節は2番手となる。それだけ、近海物の鰹節は貴重になってきていると言える。

初代が鰹節を作っていた頃の写真を見せていただいた。
その当時は大型漁船はまだなく、ずらりと並べられた亀節(半身分の大きさで鰹節にしたもの)は全て近海物の一本釣りで獲られたものだそう。現在、近海物の一本釣りで作られた鰹節は5%あるかないかという。

大型船を運行する費用、海域使用料の値上げ、資源の枯渇化、さらには鰹節工場での人手不足。鰹節にまつわる状況はかなり厳しくなってきている。さらに食べてである消費者も、鰹節から出汁をひく人は減少し続けている。
一方、手軽な液体や粉末だし調味料などの需要は増えているので、カビ付けする前の荒節は生産が増えているそう。このままではプロの料理人以外に、本枯れ節を使う人はほとんどいなくなってしまうかもしれない。

だが、やはりどれだけ手軽だと言っても、自分でひく出汁と簡易のものとは香りも風味も全然違う。そして、日本の出汁は世界のスープから見ても、とても簡単に早く作ることが出来る。それは前の日記で綴ったように、職人の方々が手をかけ心をかけて、旨味の塊にしてくれているからだ。私たちはそれをほんのすこしの間、湯につけるだけであっという間に美味しい出汁をひくことが出来る。現場を見てきたからこそ、ありがたい、という気持ちが自然と湧き上がる。

私たちはこのサイトやワークショップを通じて、出汁をひくという一手間は、日本の食の美味しさにつながっているのだと伝え続けたい。決して難しいことでもなく、料理をシンプルにもっと味わい豊かにしてくれるものだということを。

日本の食の礎である出汁の文化を、本枯れ節の文化を、食卓から支えていける未来が来て欲しいと心から思った旅だった。

(hisae daikokuya)