ご意見募集

katsuo

梅雨に入り、湿度があり、時に夏を思うような強い日差しの頃。

魚売り場にはたくさんの鰹を見受けるようになる。

「目に青葉、山ほとどぎす、初鰹」

初夏の江戸の名物を俳人、山口素堂が詠った俳句だ。

この句を聞くだけで、蒸し蒸しする季節に、清々しい新緑の風の香りが鼻を抜けていくような気分にさせられる。

 

初夏に太平洋側を遡上し、秋に南下する鰹。

5月~6月になると本州は初鰹、真っ盛りの季節に入る。

が、実は日本海側の金沢で育った私は、大人になるまであまり鰹を口にしたことが無かった。

 

関東で暮らすようになっても最初はなかなか手が伸びなかったが、

鉄分を感じる独特な香り(これが苦手な人もいるだろうが)、白身とは違う食感、あっさりしつつも食べ応えのある味わいにすっかり我が家の初夏の味の定位置に。

戻り鰹は濃厚な旨味でもちろんそれはそれで美味しいのだが、飽きなく食べられ、いろいろな料理のバリエーションもできる点で、初鰹の方を個人的に好んでいる。

食欲が落ち始める今の季節にも、さっぱりと食べられて栄養も補える。

 

鰹といえばなんと言っても、三和土や刺身。初鰹は特に脂肪が少ないので加熱しすぎるとパサついてしまう。

本来は藁を燃やした炎と煙で皮付きの鰹を炙るのが土佐の三和土だが、家庭ではなかなか難しい。私が自宅で作る場合は、金串を扇状に刺して、コンロの火で直に炙っている。

香ばしい薫りが立ってきて、皮にちょうどよく火が入ったら、裏返して身皮もさっと色が変わる程度に炙り氷水に潜らせる。

水気をよく拭いて切り分け、好みの味付けで食べる。

私は醤油味よりも塩と太白胡麻油を少しかけて食べるのが最近のお気に入り。

新玉ねぎや新生姜、大葉、茗荷などの薬味野菜をたっぷりと添えて。

 

三和土でなくてもその他の生食の食べ方としては、さいの目に切って和風や中華風、韓国風の調味料でタルタル風に和えたり、両面1分ほど燻製にしてアボカドなどとサラダ仕立てにしたり、薄く切り分けてカルパッチョにしたりも出来る。

 

加熱料理をする場合は火加減、火の通し具合が肝要だ。

パン粉付けにして揚げて中心は生の状態のカツレツにしたり、パサつかないよう弱火で優しくソテーして、和風やケイパーとレモンなどのイタリア風の味付けをまとわせたり、オリーブ油とひまわり油、ハーブやにんにくとこれまた弱火で沸騰させないようにコンフィにしてツナを作ったりもする。

さいの目に切ってほぐしながら酒、醤油、味醂、生姜などと煮付けてフレーク状のしっとりとしたふりかけにすることも出来る。

 

鰹は捨てるところがない魚と言われる。

皮付きで手に入った時は、ひいた皮に塩をふって炙るだけで美味しいつまみになる。

頭も丸ごと煮付けにされたり、一番脂ののっている腹皮の部分だけ切り取られ焼き物にされたり(鮭で言うところのハラス)、内臓は酒盗(塩辛)に、心臓も”ちちこ”と呼ばれ甘辛く煮付けにされる。

ご存知の通り日本料理には欠かせない出汁の鰹節も鰹から作られている。

その製造現場でも、鰹で捨てるのは血だけだと聞いた。

こうやって考えてみると、鰹という魚は日本人にとっては切っても切れない関係性にあるのだなぁとつくづく実感させられる。

 

流通が発達した現在は、新鮮な鰹が日本海側でも手に入るようになった。

鉄分の風味が苦手だと言っていた金沢の父にも、鰹料理をこしらえて美味しいと感じて食べてもらいたいなぁと思っている。