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茄子

梅雨の終わり、日差しも厳しくなってくる頃。

地元、鎌倉の市場には実に様々な茄子が並んでくる。

一般的な千両茄子はもちろん、紫系の種類だけでも、長茄子、ひも茄子、水茄子、米茄子、小茄子、他にも緑茄子、白茄子、紫と白のゼブラ柄の茄子などあまり馴染みのないものまで。

 

茄子って主役級の存在感ではない気もするが、実は、これほど料理によって選ぶ種類がたくさんある野菜も少ないように思う。

 

長茄子は焼き茄子など加熱料理一般に、水茄子は浅漬けに、米茄子は味噌田楽に、小茄子はまるごとの料理や漬けものに。

アジアで一般的な緑や白茄子は皮が少し固くアクが強いので、しっかりアク出しをしてからカレーなどの加熱料理に。

イタリアの種類であるゼブラ系は加熱するとトロリとなるので大きく切ってフライやステーキ、煮込みなどに。

 

農家さんに聞いたところによると、茄子というのは実に繊細な植物で、綺麗な傷の無い茄子を育てるのはとても難しいという。

それにも関わらずこれだけの品種が育てられているということは、日本人はかなりの茄子好きと言えるかもしれない。

 

さて、茄子を選ぶ際に大事なのは何より鮮度。

身が張っていて、先端のヘタのトゲがしっかり立っているもの、紫の茄子ならば色艶がツヤツヤとしているものが良い。

新鮮な茄子は、切った時にじわっと水分が出てくる。

鮮度が落ちてくると、水分が失われ皮が固くなり、中の種も茶色く固くなってくる。

市場で採れたてのものとスーパーで買ったものとで、加熱調理での火の通りの早さが違い、ぬか漬けにした時の美味しさの違いに驚かされたものだ。

きっと夏野菜全般に言えることだと思うが、生食も出来るものが多いので、こと瑞々しさが重要になってくるのだ。

 

なので新鮮な茄子が手に入ったら、なるべくその美味しさがキープできるうちに調理してしまう。

5本あれば、2本は焼き茄子に、1本はぬか漬けか浅漬け、山形風の「だし」に、残りは揚げ浸しや、麻婆茄子、ラタトゥユ、カレーなどなど、買うごとになるべく一度に調理してしまうようにしている。

 

茄子の味わいは淡白で、ほんのり甘みがある程度なので、どのようなジャンルの料理にも馴染む。

アクがある野菜だが、切ってすぐ炒めたり揚げたりしてしまえば、塩水に晒さなくても油にアクが抜けていく。

ただ、緑や白の茄子はアクが回りやすいので、一度塩水にさらしてから調理したほうが良い。

 

ここ2~3年、私の中で気に入っているのは、水茄子の浅漬けだ。

 

以前は水茄子と言えば大阪の泉州の高価な漬けものを、大事に食べるのが夏の楽しみだったが、地元の市場でも見かけるようになり、泉州のものとは品種が違うかもしれないが鮮度は申し分ないので、買ってきてすぐに仕込む。

茄子は手で半分に割いて、綺麗な色出しをするために塩とほんの少しのミョウバンをこすりつけておく。 合わせ出汁に、塩、酒、酢を一煮立ちさせて冷ました漬け汁に一晩以上漬ける。

食べる時に、一口大にまた手で割いて、仕上げにすだちをキュッと絞っていただく。

 

これは今はもう無い、金沢の寿司屋の名店、弥助さんでずいぶん前の夏に供されたもの。

箸休めとしていただいたのだが、水茄子の瑞々しさに加え、すだちの爽やかな香りが広がって、お寿司はもちろん、こちらにも感動したのをよく覚えている。

 

それには及ばないものの、毎夏、この味を再現したくて水茄子が市場に出てくるのを心待ちにしているのだ。