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無花果

無花果

子供の頃、ほとんど食卓に上ることが無かった無花果。
この果物に興味を持ったのは、大学生の頃に放映されていた当時大ヒットしていた「料理の鉄人」という番組がきっかけだった。
その審査員として今は亡き、岡田眞澄さんがゲストで招かれていて、司会者の「最後の晩餐で食べるとしたら何を選びますか?」との問いに「無花果です」と答えていたのだ。
まだ、自分が口にしたことのない果物が選ばれていたことに衝撃を受け、すぐにスーパーへ探しに行ったことを未だに覚えている。
そして初めて味わって、その何とも言えない食感と、独特な甘みに私自身も虜となった。

 

無花果は花が無いと漢字で書かれているが、実は不思議な構造の果物でその果実の内側の赤いプチプチが花にあたる。
花を食べているというのもどことなく甘美な雰囲気を漂わせる。
夏から秋にかけてが旬で、皮が張っていて、お尻が少し避けているもの、茎の切り口から白い汁が垂れているもの、甘い香りが漂ってくるようなものを選ぶと良い。
傷みが早い果実なので、乾燥を防ぐためにビニール袋などで包んで冷蔵庫に保存しなるべく早く食べる。
無花果は果物だけれど、料理にデザートにそのまま食すだけでは無く、レパートリーがなかなか多い素材ではないだろうか。

 

和食ではよく、輪切りに切った無花果の上に田楽味噌をのせてさっと炙って無花果田楽にしたり、丸ごと衣をつけて無花果の揚げ出しにしたり、白和えにする。
洋食では、カプレーゼ風にしたり、ハーブとオリーブ油、レモンで和えたり、ピッツァにのせたり・・・
デザートとしても、丸ごとコンポートにしたり、ジャム、ショートケーキ、アイスクリームなど。
果肉が柔らかいのでペーストにしない料理には、崩さ無いように優しく扱うことが肝要だ。
加熱する場合も果汁が出てこないように、高温でさっと火を入れるイメージで。
独特な香りと甘みは肉料理の添え物として相性がいい。

 

無花果のもう一つの魅力は、乾燥させたもの。
こちらは水分が飛ばされて旨みと甘みがぐっと凝縮しているので、肉との煮込み料理や、濃厚なコンポート、焼き菓子やパンに混ぜ込んだりという使い方が出来る。

 

意外な使い方では、甘酢やピクルス液に漬けたもの。
私はこの時期、新生姜の甘酢漬けを常備している。その余ってきた液に丸ごと漬け込むだけ。
翌日から食べられるようになり、ほどよくスパイス的に生姜の風味も加わって、ただ甘酸っぱいだけではない甘酢漬けが一石二鳥で出来上がる。
付け合せに添えたり、刻んでサラダやマリネに加えたり、暑い時期で体力が落ちるこの時期に、ちょっとおやつ代わりにつまむのも良い。
お隣の家では一昨年から無花果の苗木が植えられ、今夏はもりもりと大きく成長し、枝と枝の間に緑のぷっくりとした無花果の赤ちゃんが出来始めた。
娘と、少しずつ大きくなってきたね〜とお隣さんの無花果ながら、今から秋にかけて熟すのを密かに心待ちにしている。
そうそう、無花果は一ヶ月かけて熟すところから「一熟」と言われ、そこから「いちじく」と呼ばれるようになったという説もあるとか。